氷砂糖とアールグレイ

落書きとか小説もどきとかその日語りでもそもそもそ。

その一言が出てこない。

ジンのお話。

いつかのチャットでジンが見た悪夢。

 

 暗い。

あたり一面は黒で塗りつぶされていた。

(…どこだ?ここ…)

夢、だということはわかっていた。ただ、こんなところに一人きりということがジンの中のよくわからない感情を膨らませていった。

(…気味が悪い)

いつになれば覚めるだろうかと考え始めたとき、

…ずる、

「…!?」

何かを引きずるような音。それは無音の世界に大きく響いた。

ずる、ずる、

それはだんだんとある一点へ近づいてくる。それは…

(近づいて、くる…)

ふと、音が消えた。夢が覚めるのかと思った瞬間、

「わ、ぁ!?」

ぐっと下へ強い力で引き込まれる。それは、まるで底なし沼へと落ちていくような。

「や、やめろ、は、なっ!?」

自分を引きずりこむ相手を見ようと見れば、それは、

(オレが、殺した―)

自分が嘗て手にかけた者達が、身体にしがみついていた。

「あ、や、やだ、やめろ、やめ…」

必死で這いあがろうと手を伸ばす、その手は骨と肉が露出した腕に抑え込まれる。

そして、

「―…」

彼は完全に引きずりこまれ、

 

無音の空間に無音の悲鳴が響いた。

『手を伸ばして、助けを求めてもいいのよ?』

どこかで聞いた声が聞こえた気がした。

 

その一言が出てこない。

(助けの求め方なんてわからない!)

 

いつかの悪夢。

設定上は、ジンは毎日この夢見てました。