氷砂糖とアールグレイ

落書きとか小説もどきとかその日語りでもそもそもそ。

とある二人の願いのはなし

ジンがアレス君のいた研究所に仕事に行く前のラナンキュラスとステラの話

 

 「施設をつぶす?」

「ええ。しかもわざわざご指名でね」

分厚い本や書類が散らかっている室内に男の声が響く。会話の内容は普通とは言えないものであったが。

「ジン、あんたをご指名よ。政府のある施設を潰すんですって」

一人の男が今まで一言も喋らなかった男に声をかけた。壁に寄り掛かっていた男―ジンはゆっくりと目を男に向けた。

「…オレを?」

「ええ。わざわざ、ね」

一枚の紙をジンに手渡す。眼帯に覆われていないほうの瞳が紙の上の文字を追う。

ぱちぱちと何度か瞬きをし、ウェストポーチをつかむとすたすたと玄関まで歩いていく。

「…無愛想なの」

「あれでも話すようになったほうだぜ、あいつ」

そうよねぇ、と足をぶらつかせる男―ラナンキュラスはジンが出て行った方を見つめていた。

「…一ついうけどさ、お前のそういうのきめぇ。」

「あらひどい。これがアタシよ?ステラ」

ステラとよばれた男はあっそ、と机に突っ伏した。

「…あいつ、まだ他と一線引いてんの?」

顔を少し上げぽつりと問うた。

「…ええ。自分は化け物だから、ですって」

「あほくせぇ、」

はあ、とため息をついたっきりしずかになった。

 「…好きな人でもできれば変わるかしらねぇ」

「変わるだろ、お前が変わったんだから」

「あら、ステラもじゃない。あの子、どうしたの?」

「…いなくなって自然消滅。もうしらね、年下なんか駄目だ。年上が最高だよ」

ぶつぶつと呟き続けるステラに苦笑し、ラナンキュラスは愛しい人を思い浮かべた。

(ジンは、怯えているだけ。愛されたことがないから…)

「「…どうか、あいつ(あの子)に愛を」」

 

とある二人の願いのはなし

ちなみに年はラナンキュラス(27)、ステラ(26)、ジン(21)です。

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