氷砂糖とアールグレイ

落書きとか小説もどきとかその日語りでもそもそもそ。

蝕む緑と爆ぜる記憶

※奇病シリーズ※

【ジンは左目から体を覆う蔦が伸びてくる病気です。進行するとひとつひとつ記憶をなくしてゆきます。トカゲの尾が薬になります。 http://shindanmaker.com/339665

ツイッター診断のやつ。

 少し前から左目がおかしかった。

目の奥がぴりぴりと痛み、視界がゆれる。ものもらいか?とさして気にも留めず放っておいた。

それが間違いだった。

「…あッ、ぐ、う…!」

夜中、ジンは焼けるような痛みに目を覚ました。左の視界は真っ赤に染まり、景色がぐるぐると回る。その時、

ぐちゃっ

ナニカがつぶれる音がして痛みは消えた。左の視界とともに。

「…っ!?」

自分の眼窩から、ぬめりを帯びたナニカが飛び出ている。本能的な恐怖を感じ、すぐに手を引っ込める。ナニカは瞼をめくり上げている。

ベッドサイドの引き出しから手鏡をとりだし、自分を映す。

「…わあぁぁぁぁぁっ!?」

ジンらしくない悲鳴をあげ、手鏡を放り投げる。手鏡に映った自分の眼窩には。

赤い血と眼球の欠片に塗れた、緑色の蔦が生えていた。

「…ジン…?」

声のした方を見ると、アレスが目をこすりながらこちらへ歩いてきた。さっきの悲鳴で目を覚ましたのだろう。

「どうしたの、ひめ…!?」

眼窩から生えた蔦を認識したのだろう。目を見開き、おろおろし始める。

「ど、どうしよう…!な、なんで?なんで…!?」

壁に寄りかかり荒い息をしているジンは何かを考え込むように眉間にシワを寄せた。

「そ、そうだ、ラナ呼ぼう!ラナなら何かわかるかも…!」

「…ら、な?」

まるで知らない人を呼ぶような声音で言ったジンをアレスは訝しげに覗きこむ。

「…ジン、どうしたの…?」

「…あ、れす」

 

 

「らなってだれだ?」

 

 

蝕む緑と爆ぜる記憶

(しゅるりと蔦が伸びた気がした)