氷砂糖とアールグレイ

落書きとか小説もどきとかその日語りでもそもそもそ。

紅い瞳の鮫は小さく泣く

フィクスのはなし

 

 

紺色の空に淡く輝く月がぽっかりとうかんでいる。

月を眺めながらぼんやりとワインを揺らすフィクスは物想いにふけっていた。

「……」

血のように赤いワインをぼんやりと眺めるフィクスは大きな月を眺めふうと息を吐いた。

「…フィクス」

ふいに名を呼ばれ振り向くとロストがじっとこちらを見つめていた。

「…ロスト、どうしたんだよ、寝れねえの?」

「それはこっちのセリフだです。らしくねえですよ」

相変わらずの口調にいつものように言い返す気力もなく、苦笑を返すとロストは眉間に皺を寄せ、フィクスの隣に座った。

「…こんどは、何考えてたんだよ」

「…」

昔のとおりの口調の戻ったロストの言葉は、何故か安心できるような声音で。フィクスは視界がぼやけるのを感じた。

「…オヤジに、反発するかたちで海にでて、あいつら乗せて、…ここに、いていいのかな、って」

ロストはふぅと息をつき、となりの鮮やかな青の髪をぐしゃぐしゃにかきまわした。

「ろ、ロストっ!?」

「…らしくねーこと考えてんじゃねーよ。あんたは前だけみてればいいんだよ。あんたがそんなこと考えてたら俺等は誰についていけばいいんだよ」

ぽかんと呆けた顔でロストを見つめるフィクスにそう言えばフィクスはくすりと笑いワインを一気に飲み干した。

「…うえ、やっぱ酒は飲めねえ。ジュースがいい」

「…いつまでたってもガキの味覚だなあんた」

「はは」

項垂れ、言い合いを続けるフィクスの言葉にひきつる音が聞こえ、言い合いは終わる。

彼はいつから声を殺して泣くようになったのだろう。

ロストは空っぽになったワイングラスを持ち、中へと戻った。

 

紅い瞳の鮫は小さく泣く

(いつか声を出して泣ける日がきてくれると信じて)

 

 

フィクスはいつもたよれるキャプテンでいるけど、時々こうやって反動がきたり。

雲雀さんの前では素直にふるまえる日がくるかも