氷砂糖とアールグレイ

落書きとか小説もどきとかその日語りでもそもそもそ。

かえらない

少し村ですごした亜寿を迎えにきたようです。

 

 

迷子になって、知らない村で目が覚めて。亜寿は一生分のパニックを経験したなと思った。

余所者の自分に、村の人達は優しくしてくれた。人見知りの激しい亜寿が溶け込むのは時間がかかったが、それでも優しく接してくれた。

「今日こそ、今日こそ言うんだ。しっかりしろ僕」

亜寿はすくっと立ちあがった。

―あの人に、お礼をいわなきゃ。

助けてくれて、ありがとうございますって。

どこにいるだろうときょろきょろあたりを見回すと入口の向こうに何かが見えた。

「……エレン?」

ふわりとなつかしい匂いが鼻をかすめる。耳のいいあいつはそんな呟きもひろったらしく近づいてきた。

「…あっすー!あっすー!」

「エレン、おとうさんも…」

近づいてきたのはエレンと太陽だった。エレンはぶんぶんと尻尾を振っていた。

「よかった!無事なんだ!」

「う、うん」

「よかったよかった!ほら、帰ろ!」

「…え」

帰ろう、それは普通のことである。そのはずなのに、亜寿の頭には否定の言葉ばかりが浮かんだ。

エレンが心配そうにこちらを見ている。亜寿は口を開いた。

「…僕、まだやってないことある。だから、

かえらない

(帰りたくないんだよ。どうしてかわかんないけど、帰りたくない)

 

 

亜寿の反抗期←