氷砂糖とアールグレイ

落書きとか小説もどきとかその日語りでもそもそもそ。

俺は許されるのだろうか

人を愛して、失って、死んで、生き返って、また人を愛する神の話。

うちのスイクンの過去的な。自宅CP注意なのです!←

 

 

俺はまた繰り返してしまうのじゃないだろうか。

 

「水神様!」

胸に何かを抱えた少女がこちらに向かい走ってくる。むくりと紫色の髪の男はけだるげに身体を起こすと少女の方を見た。

「…ウェヌス

「はい!」

にこにこと笑う少女は勢いよく男の胸に飛び込んだ。男が抱きとめると少女、ウェヌスはぎゅうぎゅうと抱きついた。

「…どうしたんだ、いつにもまして上機嫌じゃないか」

「えっへへー、実はですね!私16になったんです!」

「…?それで…?」

「私、大人になれるんです!」

満面の笑みで言った「大人」に男は首を傾げた。男にとっては、大人も子供のようなものであるが。

「あの集落では、16才になった子供は光の儀式を受けるんだよ」

「…帰ってたのか、きょうだい」

白い髪の男がくすくすと笑いながら腰を下ろした。

「雷神様!」

「こんにちは、ウェヌス。おめでとう」

「きょうだい、儀式って?」

男が白髪の男に問うと白髪の男は男に説明した。

「つまりは、進化だよ。ウェヌスヒンバスだから…ミロカロスになるのか」

「はい!」

しんか、と呟いた男はむう、と考えた。進化、大人、成長…。

男の脳内で一つの考えに行きついた。

「ということはウェヌスは俺と結婚できるのか」

「そういうことです!」

ぱん、と手を叩いて言うとウェヌスはぴょんと飛び上がって笑った。感情に乏しい男の顔には珍しく笑みが浮かんでいた。

「気がはやいなあ、もう」

白髪の男と、いつの間にかいた茶髪の男も、笑っていた。

それから、何日かたったある日、ウェヌスはぱったりと男の元を訪れなくなった。

 

ごうごうと塔の外では風がないていた。それに負けないくらい、男は泣いていた。二人の男の顔も、暗く沈んでいた。

ウェヌス?…ああ、あの子は、死んだよ。…足を滑らせて、崖から落ちたんだ』

「…俺のせいだ、俺が、急かしたから」

昨晩、男とウェヌスは約束をした。塔で式をしよう。はやくこい、と。

「…きょうだいのせいじゃないよ、泣かないで…」

「…でも…!」

「…早く来ちまっただけだろ、その時がさ」

「そんな言い方…!」

ないでしょ、と白髪の男が茶髪の男に言った瞬間、地響きのような音と強い光が塔に響いた。それと、何かが燃えるような音と臭い。

「…何、この臭い…!」

「…まさか!?」

どん、ともどう、ともとれるような音が上から響き、燃えた木材が幾つも落ちてきた。

「燃えてる、塔が…!」

彼らは神と呼ばれていたが創造主に創られた存在ではなかった。このままでは炎に包まれ灰となるだろう。

炎はものすごい速さで塔全体を包み込み、崩壊を始めた。

(…ウェヌス…)

三人は、炎に抱かれて意識を手放した。

 

「…あ、起きた。具合はどう?」

ぼんやりと覚醒した男は状況がつかめなかった。死んだはずの自分が、何故?

「君のきょうだいもさっき目覚ましたよ」

がばりと身体を起こし自分の身体を見る。見覚えのない着物を纏っている。それは二人も同じだった。

「…これ、は」

「私は聖。君たちを生き返らせたんだよ」

聖と名乗った男は今までのことを簡単に話し始めた。

塔の火事は突然の雨で鎮まった。そこで死んでいた自分たちを哀れに思い生き返らせた、ということだった。

「君たちを勝手に不死にしてしまったこと、すまなかった。どうしても、そうなってしまうんだ」

「いや、謝らないでください。それより、感謝しているんですから」

そうか、と微笑んだ聖はくるりと踵を返した。

「さて、これから君達えをつれて聖域へ向かう。母に、紹介しないと」

「…母」

三人はまだ知らない。聖域で、名をもらうことを。そして、アクアと呼ばれるようになる男はまだ知らないのだ。

 

森の奥の小さな湖。アクアはその浄化に来ていた。そこで出会った少年。

「…ウェヌス…?」

嘗て愛した少女に、瓜二つだった。

俺は許されるのだろうか

(お前を死なせた俺がお前にそっくりな奴を愛しても)

 

 

というわけでアクアの過去話でした。二人の男はエンテイライコウです。この二人もいつか話書こうかと。

ウェヌスは勝手にヴィーナス君にそっくりという設定にしてしまいました。ごめんねほっちゃん…!