氷砂糖とアールグレイ

落書きとか小説もどきとかその日語りでもそもそもそ。

多重人格で五つのお題 2 「あなたは誰?」

「どうやら私は眠ると精神世界へ行くようです」

「…時々、一人いなくなります」

 

 

 

「あれ、司郎さん?休んでてっていったのに」

恭也が書類を纏めていると開いたドアの前にトレイを持った司郎が立っていた。部屋に戻ったのを見送ったはずなのに、と思いいながら声をかけると司郎をにっこりと笑った。

「…えっ?」

「きょーちゃん疲れてるでしょ?お茶淹れたから飲もうよ!」

「えっ」

恭也はつい素っ頓狂な声をあげた。それもそうである。

司郎は笑わない。人を馬鹿にしたような笑いはするが今恭也に向けているような笑いはしない。しないはず。

「きょーちゃんお砂糖幾つ?ミルクとレモンどっち?」

「ま、まってまって!」

両手を前にだすと司郎はこてんと首を傾げた。

「あ、あんた誰!?」

ぱちぱちと目を瞬かせた司郎はくすっと笑った。

「司郎、だよ?」

いたずらそうな笑みでそう言った。

「ん…な、わけないじゃんか!司郎さんは、そ、そんな風に…!」

「…んー?あー?何ー?えー、僕まだきょーちゃんとお茶してないー」

「司郎」は恭也そっちのけで「誰か」と話はじめた。しばらくぶつぶつと話していたが、「…はぁーい」と言い目を閉じた。

「…え、え」

「ぅ…」

額に手をあて呻き声を漏らした。その声は恭也が知る司郎のものだった。

「…司郎、さん…?」

「彼」はニィッと笑った。

「何だ?キョーヤ君?」

 

あなたは誰?

(司郎さんは何処!?)