氷砂糖とアールグレイ

落書きとか小説もどきとかその日語りでもそもそもそ。

罪の果実、罰の味

西宮の秘蜜パロのガロット目線

 

 

それは夕日の綺麗な日だった。

私は少し遠くまで散歩をしていた。ただの気まぐれ。夕日の眩しさに目を細めたら向こうに何かを見た。近づいて見てみればそれは真っ白な翼を持ったヒトだった。

…天使、であったんだ。すごく、綺麗な瞳をしていたその天使はどうやら怪我をしているようだった。無視して放っておくことができなかった。何故だか、できなかったんだ。教会につれ帰ればあいつらはきゃあきゃあ好き勝手騒いでいた。たしかに珍しいことだろうと自分でも思う。

手当てしてやれば天使はとてもきれいな声でありがとうございます、と言って微笑んだ。

…嗚呼、神はやはり無慈悲で残酷だ。

これが聖職者である私が犯した一つ目の罪。私は、その天使に恋をしたんだ。

 

天使、雷京は手土産を持って教会に訪れるようになった。あいつらともすぐに打ち解けたようであった。恋をしたはいいが私も雷京も男でありさらに私は聖職者である。そもそもの根本で私は恋愛を咎められているのだ。この時ばかりは神を恨んだ。嗚呼やはりあなたは無慈悲で残酷ですね、神よ。

そんな私の邪な感情に気づいてしまったのか、雷京はしばらく会えないと私に告げた。仕方がないだろう、そう思うがこみ上げる寂しさは堪えられなかった。

叶いもしない願いにみっともなくしがみついてしまった、それが私が犯した二つ目の罪。

 

雷京が教会に足を運ばなくなってしばらくした日、教会で結婚式が行われた。幸せそうに笑う新郎新婦を見ているとほんの少し苦しくなった。

新郎新婦への誓いを確認し顔を上げると人ごみから少し離れたところに立っている少女が視界に入った。胸が高鳴った。

雷京にそっくりだったんだ。見た目じゃない、雰囲気が。

その少女には申し訳ないが、私は雷京を重ねてしまったんだ。

少女はいきなりこちらに背をむけ走り去って行った。思わず後を追いかければ少女は道端に座り込んで泣いていた。

何故泣いているのか、と問いかければ少女は貴方の優しさが胸を抉るのです、と答えまた走り去っていってしまった。

雷京も、あんな風に泣くのだろうか。

 

その日はたしか雷京と出会ってちょうど一ヵ月の日だった。家を出ようとしたとき、私は目を疑った。だって、あの日から姿を見せなくなった雷京が立っていたんだから。

雷京は微笑んで歩き出した。私は引かれるように彼の後を追った。たどりついた先は見知らぬ地下室。

哀れな私。目の前の雷京は雷京でなかった。あの日初めて出会った雷京と同じような羽を持つ天使であった。

神は私を悪だとしたようだ。目の前の神の使いは私に銃口を向けた。

その裁きの矢に貫かれたのならこの想いも消えるだろうか。私は目を閉じた。閉じる瞬間あの少女が私を突き飛ばした。少女と私の位置が入れ替わった瞬間、銃声が響いた。

血と、羽が舞った。

少女は、雷京だったんだ。思わず絶えず血を流す雷京を抱きしめれば雷京はあの日のように私に微笑んだ。

 

嗚呼、どうして!何故あなたはそこまで無慈悲で残酷なんだ、神よ!

分かっていた。この事態を引き起こして、雷京を死に至らしめるようなことにしたのは紛れもない私なんだ。愚かだった私が一番の大罪者。

だから、最期までそんな綺麗に笑いかけないでくれ、雷京。愚かで穢れた聖職者はお前のような美しい天使に笑いかけてもらえるような資格なんかないんだ。なあ、雷京。私はお前を愛していたんだ。本当に、本当に、心から愛していたんだ。どうか、お前は生まれ変わり幸せになれるように。

 

罪の果実、罰の味

(罪の果実を貪った私に満ちるのは罰の味)

 

書いててすっげえ楽しかった^0^

とんだ両片思いになってしまった