氷砂糖とアールグレイ

落書きとか小説もどきとかその日語りでもそもそもそ。

本能と空腹と

シュリーヴンは限界のようです。

 

 

 

 

食欲、とは人の三大欲求の一つで人によっては一番強いと言われるものである。そもそも三大欲求とは人が生きるのに必要なもので。

その食欲は彼等にとって少し異常なものだった。

 

「…あ゛…」

ふらふらと彼、シュリーヴンは歩いていた。彼は破壊を司るイベルタル、ファイルンの本能である。

本能であるため、ファイルンの食欲は小さくなったがシュリーヴンは本能そのものなのである。

「…腹、へった」

青いシャツの上から腹をさする。ぐう、という腹の虫は聞こえなかったが確実にシュリーヴンは空腹であった。

もともとイベルタルとは他の者の命を食らって生きるものである。生気を他者に分けてもらっても生き延びることは可能であり、ファイルンも生気を分けてもらい生き延びているがシュリーヴンには分けてもらう相手がまだいなかった。

(…食いたい)

ぽた、と口の端から唾液が流れ落ちた。半開きの口からはぎざぎざと鮫のような歯が覗く。

限界が迫っていた。

(お願い、治まれよ、みやちゃんがケーキつくってくれっからさ、な、お願い、俺、治まれよ)

頭を抱え衝動を抑えつける。じわじわと頭の回路を焼き切っていくような感覚が絶え間なく続いている。

「…!」

その時、自分の前に人の気配がした。シュリーヴンの思考回路はぷつりと焼き切れた。

その人を道端に押し倒しマウントポジションをとる。驚愕しているその人ににぃっと笑いかけた。

「なぁ、なぁ、あんたうまそーだな、くっていい?」

 

本能と空腹と

(我にかえったら下に人がいた)

 

シュリーヴンは食う直前に我にかえったので食われてないよ!()