氷砂糖とアールグレイ

落書きとか小説もどきとかその日語りでもそもそもそ。

こっちを見てよご主人様

仁王とイヴェリアちゃん。ツイッターのセリフタグから

 

 

「…それ、本当?」

そう問えば目の前の子は頷いた。

「本当に、そこへいけばイヴェリアちゃんに会えるの?」

 

「なんでこんな朝早くから行くのよ…」

「だって、いつくるかって聞くの忘れてたんだもん」

あんたバカね、と美也子は缶コーヒーを啜った。ふす、と鼻を鳴らした仁王は前方に聳える建物を見つめた。

(会えるんだ、やっと、イヴェリアちゃんに)

無意識に飛び出した尻尾が歓喜にぱたぱたと揺れる。まだあの指輪は持っていてくれているだろうか。今度はちゃんとしたやつを渡すのだ。そして、言うのだ。

「美也子もよかったじゃん、メイドさんに会えるかもよ?」

「…本当に良かったって言えるのかしらね」

遠くを見ながら呟かれた言葉にえ、と言葉を漏らした。

「…美也子、それ、どういう…」

言い終わらないうちに扉が開く音が耳に飛び込んだ。振り返れば忘れもしない姿。

「…イヴェリアちゃん!」

名前を叫べば彼女はほんの少し驚きを浮かべてこちらを見た。しかしすぐにそれは消えて今まで見たことのない無表情で呟いた。

「…誰ですか、あなた」

「…え?」

時間が止まったような気がした。目の前の彼女は顔を背け突き放すように続けた。

「…人違いじゃ、ないですか?」

失礼します、と頭を下げた彼女は仁王の横を通り過ぎた。思わず伸ばした腕は美也子によって抑えられる。

「何すんの美也子!イヴェリアちゃんが…!」

「だから言ったでしょ!?本当に良かったのかって!」

怒鳴りつけられると何かが切れたように仁王の膝がかくん、と折れた。倒れ込みそうになるのを美也子が支える。小さくなっていく彼女の背中を滲む視界で見つめながら仁王は叫んだ。

「…イヴェリアちゃん…っ」

こっちを見てよご主人様

(どうして俺を見てくれなかったの?)