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氷砂糖とアールグレイ

落書きとか小説もどきとかその日語りでもそもそもそ。

Heiligen behaftet sein

教会の裏の顔。

 

 

「待ってよおにいさん達ぃ」

気味悪く間延びした声を背に男たちは必死に森の中を駆けていた。男たちの服は何かに切られたかのように裂かれていた。

止まったらだめだ、後ろを振り向くな、と絶えず自分自身に言い聞かせる。

その時だった。

「っ!?」

ひゅん、と風を切る音が聞こえ隣を走っていた仲間の一人が短い悲鳴をあげ倒れた。しかしかまっている暇はない。心の中ですまない、と呟いた。

「…ちぇっ、あんなにいてしとめたの一人かぁ。ラックうるせえんのにな…」

 

声の主が追ってきていないことを確認し男たちは息をついた。

何故こんなことになったのか、頭を抱えた。とりあえずどこか夜を明かせるところを探そうと思ったその時、小さな何かが数個投げ込まれた。

「がっ!?」

小さな何かは地面に転がると同時に爆発し男たちを吹き飛ばした。爆煙の向こうにゆらりと人影が浮かんだ。

「あ、ジ、ジベットさんが言ってた、取り逃した人達、ですよね?ど、どうしよう、生きてる」

先ほどのナイフの傷と今できた火傷や打撲がじくじくと痛みを発している。しかし人影の発した生きてる、を聞いた瞬間男たちは痛みをこらえ走り出した。走り出そうとした。

「…!?」

何かがきらりと光った様な気がして今まで先頭を走っていた男が体制を低くした。その男の身体を掠めて幾つもの銃弾と血の飛沫が飛んだ。

「まったく、兄様は詰めが甘いんです。声なんかかけてないでさっさとしとめればいいのに」

「それじゃあダメだよ、何も知らずに死ぬことになっちゃうよ」

それもそうね、と笑い混じりに交わされる物騒な会話に男の本能が逃げろと警告する。それに従い走り出す。

「ダメですよ」

きらりと光る細い何かが男の腕に巻き付き食いこむ。次の瞬間には男の腕と血がぱっと舞った。

激痛に蹲りそうになるのを気力で抑え込み走った。その背中を八つの冷たい目が見つめていた。

 

血をぱたぱたと滴らせながら男は無我夢中に走った。どこか、どこか建物の中へ。

前方に見えた建物に駆け込む。荒い呼吸を整えようと深く息を吸う。出血多量のせいで霞む視界で見渡すと一人の人影を捕えた。

「…なんだ、あいつら、逃したのか」

暗闇の中で淡く浮かび上がる青い髪の人影はゆっくりと男に近づいていく。

「ひっ」

「…ひとつ聞きたい。…この周辺で死んだ少女を知っているか?」

死んだ少女、それを聞いた男の脳内に数日前の光景が浮かんだ。

「そうだ、お前が、お前たちがこの手で殺めた少女のことだ」

ばたん、と大きな音を響かせて扉が閉じた。ステンドグラスから差し込んだ月の光が人影の姿を浮かび上がらせた。

「…これは虐殺ではない」

青い髪の人影の瞳に光がクロスする。

「神の御命だ」

 

Heiligen behaftet sein

(掃除が大変だ、と青い人影は呟いた)