氷砂糖とアールグレイ

落書きとか小説もどきとかその日語りでもそもそもそ。

べつに嫌なわけじゃない

奇形を気にしてるアイビーの話

 

 

「ふぅ、あらかた掃き終わったな」

額からおちる汗を拭いアイビーは箒を物置にしまった。空を見上げれば太陽はさんさんと燃え盛っているのか目を焼く光が降り注いでいる。この暑さに鋼タイプであるハレルヤはすっかりまいってしまったらしくぐったりしながらぶつぶつと「聖(ひじり)がんばりすぎだろ…がんばんなくていいんだよ…聖…」と言っていた。聖とは誰だろう。

「夏は、落ち葉少なくて助かるけど…秋になるとなあ」

この屋敷の庭を任されているアイビーにとって落ち葉は天敵である。少しならば風流とも言えるだろうが大雪の如くどっさりと積もってしまうと風流どころの騒ぎではない。

しかし屋敷の主やリジーは掃いた落ち葉に火をつけ芋を焼き始めるので頭どころか胃も痛くなってくる。

「…まぁ、いいか」

今年はあの子も呼ぼうか、と思いふと自分の手を太陽に透かした。

細い血管は見えず、歪な影が浮かび上がった。

本来五本あるはずの指は四本しかなく歪にとがっている。さらに手から肘にかけて真っ黒に変色しているのである。世では奇形と呼ばれ、時には迫害されることもあるという。

(…さとりちゃんはまだ、手見たことないからな)

見せる気は、無い。

今まで迫害まで発展することはなかったものの手のことを知ると皆離れて行ったのである。この屋敷の者達は別だが。

あの少女に離れていってほしくない。

「…暑い」

アイビーは乱暴に顔を拭った。拭ったのは汗なのか、涙なのかわからなかった。

べつに嫌なわけじゃない

(ただ普通の腕だったらよかったなって思っただけ)

 

 

さとりちゃんと会うときは手袋してるよーなアイビー。

水中花では春にお花見、夏に流しそうめん、秋に焼き芋、冬に雪祭りがあります。