氷砂糖とアールグレイ

落書きとか小説もどきとかその日語りでもそもそもそ。

最期の記憶

IF。聖域の崩壊。

 

 

これは罰なのだろうか。創造主としての立ち位置を無視し下界へと干渉しすぎた。

それでも、子供たちをも、とは。

あまりに残酷ではないだろうか。

 

「…あら、夢現じゃない。引きこもりはやめたのね」

「…おかーさん」

暗い宮殿の中、一人玉座に座るシャルビーネへと向かう足音が聞こえ声をかければ控えめに声が上がった。

「…あの子のところへいってあげなさいな。もう会えないんだから」

「…お、おかーさんは…おとーさんのとこには…」

震える声で投げかけられた台詞ににこり、と場違いな笑みを浮かべ答えた。

「…あとでいくわ。だから、ほら」

「…う、うん…」

ぱたぱたと遠ざかっていく足音にふう、と息をつき悲しげに笑った。

「…会えないわよ、会えるわけないじゃない」

あの規律を絶対とする彼に会いこのことを言えばきっと彼は自分に呆れるだろう。今生の最後に愛する彼に嫌われるだなんて最悪ではないか。

黙っていなくなるのは心苦しいが、干渉されなければ永遠を生きる身。時間が忘れさせてくれるだろう。そう、幼かった時のあの別れの日のように。

「…あの子たちは、どうかな…」

今頃愛する者と最期の時を過ごしているだろう我が子たちを思い浮かべる。ジェーダと海姫は無理して笑ってはいないだろうか、翠陽は、強がっていないだろうか。せめて、この時だけは、本心をさらけ出してほしい。

「……マルク……」

ぽつりと彼の名を呟く。目を閉じれば、彼との思い出がよみがえる。彼は自分が消えたと知ったらどうするだろうか。一度だけ泣いて、あとはすべて忘れてほしいと思う。自分を引きずるだなんてしてほしくない。

「…マルク、大好きよ、愛してる」

体の感覚がなくなっていく。ああ、もうなくなるのだと、理解した。

「愛してるわ、ずっと…私が、なくなっても…ずっと、ずっと…」

シャルビーネ、と。

愛する彼のあの大好きな声が自分を呼んだような気がして。

それきり‘‘シャルビーネ達‘‘はこの世界から消えてなくなった。

最期の記憶

(どうか泣かないでいとしいあなた)