氷砂糖とアールグレイ

落書きとか小説もどきとかその日語りでもそもそもそ。

まっかなほのお、あたたかいあなた

エレンと亜寿の過去話。

 

 

「エレンー!遊ぼーっ!」

木漏れ日が柔らかく差し込む森の集落の中、ちいさなピチューの少年が一つのツリーハウスに声をかけた。

「あっすー?おはよー」

そこからひょこりとコリンクの少年、エレンが顔をだす。へらりと笑うとあっすーと呼ばれた少年、亜寿はぷぅと頬を膨らませた。

「もー!少し遠出しようって言ったのはエレンでしょ!」

「あー、ごめんごめんっ」

ひょいっとツリーハウスから飛び降りるとぐいぐいと亜寿の手を引っ張る。

「かあさーん!ちょっと遅くなるけど行ってきまーす!」

遠くなっていく森は、やっぱりきれいだった。

 

森の外は二人の未知のものでいっぱいだった。時間はあっという間に過ぎ去っていった。

「あー楽しかったー!」

「エレン川に落っこちたもんね。皆に言おうか」

「やめてよ!あっすー酷い!」

わあわあと言い合いをしながら歩いているとおかしな匂いが鼻についた。

「…なにこの匂い、」

何かが焼ける匂い。それはいつか葉を燃やしたような匂い。

それと、嗅いだ事のない匂い。

それの正体は、すぐにわかった。

森が、燃えていた。

そして、多分、そこで生きていたものすべても、燃えていた。

「…かあさんッ!」

エレンは走りだそうとした。しかし、その足に亜寿がすがりついてきたため、出来なかった。

「え、えれ…いかな、やだ、こわ、あ、ぁ」

きっと、亜寿にはわかってしまったのだ。それを感じ、エレンは茫然と燃え盛る炎を見つめていた。

 

「…おい、どうしたんだ?」

誰かが亜寿の肩を揺さぶった。ぼんやりと亜寿が顔をあげると一人の男が覗きこんでいた。

「おい、どうしたんだ、この焼け跡。火遊びってレベルじゃねーぞ。どう…」

わああ、と二人は声をあげて泣きだした。男はおろおろと二人を見、ぎゅっと抱きしめた。

まっかなほのお、あたたかいあなた

(きっといきてる、いまでもしんじてるよ)

 

二人にとって炎はトラウマだったり。エレンの場合、目かっぴらいてがたがたしだします。