氷砂糖とアールグレイ

落書きとか小説もどきとかその日語りでもそもそもそ。

碧い月光 1 「産まれてきてはいけない子」

「わたしとにいさんををおいていなくなったかあさんたちなんてきらいです」

 

昼でも薄暗い路地裏。そこで五、六人の男が何かを蹴っていた。

「やめなさい!しろーからはなれてー!」

小さなイーブイの子供が男の足にしがみつく。男は子供がしがみ付いた足を払った。その拍子に子供の体は吹っ飛んだ。

「にいさんっ!」

男達が蹴っていたものが声をあげた。まだ幼い、子供の声。

「…っいいかげんにしてください!おっきいこえだしますよ!」

子供らしからぬ迫力に男達はばたばたと走り去った。いなくなると子供は蹲っている子供に駆け寄った。

「しろー!しろー!」

「にぃさ、だいじょ、ぶ?だいじょーぶ?」

司郎と呼ばれたぼろぼろの子供は兄さんと呼んだ子供、慶の心配をする。慶はぼろぼろと涙を流し司郎の体にしがみついた。

体を起こした司郎を支え慶は家へと向かった。

ぼろぼろの二人をみて大人達が心配するのは慶だけだった。それが慶には許せなかった。しかし子供の自分に司郎を守りきる力はなかった。

『まぁ慶ちゃん。大丈夫?手当してあげようか?』

『司郎、ちゃんは…ごめんなさいね、薬が足りないのよ』

『でも、慶ちゃんも司郎ちゃんのこと、しらんぷりした方がいいわよ』

 

『だって、司郎ちゃんは産まれてきちゃいけない子だもの』

「ちがいます…」

ぐずぐずと鼻をならし慶は呟いた。司郎は毛布の中ですぅすぅと寝息をたてている。ふわふわの白い髪を撫でながら慶は囁いた。

「だいじょうぶ、しろーはわたしがまもります。でも、かあさんたちのこと、きらいにならないで。かあさんたちは、わるくないの」

 

産まれてきてはいけない子

(絶対に護るから)