飛沫の恋心
蒼星と緋月が人魚姫についてはなしてるだけ。
「あ、そうせー、これ返すねー」
ふらりと蒼星の部屋にやってきた緋月はぽす、とベッドの上に一冊の本を置いた。
「…これ、結構前に貸した奴なのだよ」
「うん、わすれてた」
ごめんねー、とへにゃりと笑う緋月に呆れながら蒼星は本を棚にしまう。
忘れっぽいのは昔からだ。本が返ってきたのはむしろ喜ばしいことだ。
そう考え蒼星はため息をついた。
「ねぇそうせー」
「何なのだよ」
「どうして人魚姫は王子様に恋したの?」
思わず緋月の方を見れば緋月は真剣な目で見ている。
なぜ、人魚姫は王子に恋をしたのか。
考えたことはなかった。
「だってさ、人魚の中にも男はいるでしょ?なんでわざわざ陸地の生き物に恋するのかなーって」
「…ん、んん」
「死んでもいいくらい、好きになるものなの?一目ぼれって」
緋月がぽつりと零した。
「……きっと、」
飛沫の恋心
(きっと、人魚姫は陸地に恋をしたんだ)
よくわからない話。