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氷砂糖とアールグレイ

落書きとか小説もどきとかその日語りでもそもそもそ。

暗い闇の底で

地上の光も届かぬ奥底にて。

聖の話

 「…ひじりーん、朝だよ、ご飯置いとくかんなー?」

かたん、と食事が置かれた盆を小さな隙間から鉄格子の中へ置いた。その置いた音さえ反響するほど静かな空間にいる人物は生きているのだろうか、と疑問に思うことがあるが盆をさげにくれば食事は食べられているのだから生きているのだろう。きっと。

「…じゃあ、またくるから、さ。できれば、話したいなー…なんて」

暗闇の向こう側にいるはずの人物は何も答えない。それでもいつか彼がいるべき場所に戻ってきてくれることを祈って食事を運んできた彼、ボルケイノは地下を後にするのだった。

 

「…昨日はアクア、今日はボルケイノ。明日はライトニングですかね」

ボルケイノが立ち去ってからしばらくたった後、暗闇の奥でゆっくりと人影が身体を起こした。

暗い地下でもあたりを照らすような眩い陽の色の髪の男はあたりを見回し食事を手繰り寄せた。

「…んん、美味しい。フィオーラ、どんどん上手になっていってますね」

冷めてしまったスープを口に運んで地上にいる花畑の管理人の少女を思い浮かべる。彼女が尊敬するこの男に褒められたと知ったのなら顔を赤くして花のような笑顔を見せてくれるのだろう。しかし、ここは彼女のいる地上からは深く離れた地下であるのだからそれが届くことはないのだが。

「…おや」

盆に食事とともにのせられていたメモ用紙に目を落とす。何か書いてあるのだが暗くて読みにくい。白く細い指先をすっと空中で動かすとぽっと淡い炎が灯る。その炎にメモを照らした。

「…へぇ、別の創造主とともに暮らすこととなった…ですか。だからにぎやかだったんですね」

字の筆跡からして書いたのはアクアであろう、彼はきょうだいと仲良くやっているだろうか。

メモを小さな小箱へとしまい、食事を食べ終え盆を格子の外へと出す。

さあもうひと眠りしようかと寝床へと向かおうとしたとき誰かが地下へと降りてくる音が聞こえた。

「…?」

誰、と問いかける前に、その誰かは檻の前に立った。

 

暗い闇の底で

(きょうだいに似た知らない人)